それも南瞻部洲下過五百踰繕那乃有地獄なんせんぶしうのしもごひやくゆぜんなをすぎてすなはちぢごくありと云ふ句があるから、大抵は昔から地下にあるものとなつてゐたのであらう。唯、その中で孤独地獄だけは、山間曠野樹下空中さんかんくわうやじゆかくうちゆう、何処へでも忽然として現れる。
孤独地獄 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)