秦の憂愁しんのゆうしゅう
星野武夫が上海に来て、中国人のうちで最も逢いたいと思ったのは秦啓源であった。だが秦啓源は、謂わば上海の市中に潜居してるもののようで、その消息がよく分らなかった。 星野は中日文化協会の人に頼んだ。 協会の人は頭をかしげた。 「秦啓源氏のことは …