非力ひりき)” の例文
まだ前髪まえがみの残っている、女のような非力ひりきの求馬は、左近をも一行に加えたい気色けしきを隠す事が出来なかったのであった。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
宮内は骨細い生れつきで、襟首えりくびのあたりは女かと思うばかり、やわらかい線をしていた。見るからに弱々しいのは姿ばかりではなく、実際に非力ひりきであった。
討たせてやらぬ敵討 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
麻油は驚いた。が非力ひりきな伊豆をいっぺんにね返すと、あべこべに伊豆の首筋をとらえて有無を云わせずにめつけた。伊豆はばたばたもがいて危く悶絶もんぜつするところまでいった。
小さな部屋 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「この音色で、非力ひりきなわたくしの爪音つまおとが、どこまで達しるかしら。」
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)