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片小鬢
考へ所持の金子を盜み取んとするにより
引捕へて金子は取り返し以來心を改めよとてよく/\
異見を
差加へ候節宿屋の者共
馳來りて
渠が
片小鬢の毛を
拔取入墨を
取んとしたる
騙子なり其時
彼奴を
引捕へしに宿屋の者ども寄集り
片小鬢の毛を引拔て
入墨をなしたるなり因て某し彼奴を
戒しめ以後惡心出しなら其の入墨を
水鏡に
映し見て心を
見たりしがはて
汝れは
何處でか見た樣な奴オヽ
夫々片小鬢の
入墨にて思ひ出したり汝は/\不屆なる奴と
白眼付られ久兵衞は再び
驚き何とぞ御武家樣
御慈悲を願ひ奉つると何か樣子有氣に疊へ
天窻を