黄金虫こがねむし)” の例文
「ええ、そうよ。黄金虫こがねむしだから、たんすにれてしまっておくと、縁起えんぎがいいと、おかあさんがおっしゃってよ。」と、久代ひさよさんがいいました。
玉虫のおばさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
磯五という銀蠅ぎんばえ黄金虫こがねむしのような男がくっついてきて、それと争わなければならないようなことになるなら何もほしくない。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
薄い光のさしたグラスの中にはまだ小さい黄金虫こがねむしが一匹、仰向あおむけになってもがいていた。T君は白葡萄酒しろぶどうしゅゆかへこぼし、妙な顔をしてつけ加えた。
カルメン (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
矮身せいひくで、おそろしく近眼ちかめな、加之おまけに、背広のせなをいつも黄金虫こがねむしのやうにまろめてゐた良人をつとに、窮屈な衣冠を着けさせるのは、何としても気の毒であつた。
家畜の糞を丸めてボールを作り転がし歩く黄金虫こがねむしがある。あれは生活の資料を運搬する労働ではあろうがとにかく人間から見ると一種の球技である。
ゴルフ随行記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
けし粒ほどの小蟻こあり黄金虫こがねむしか何かを引っぱるように、小蒸汽はそれをきなやみつつ、じりじりと近づいた。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
黄金虫こがねむし」という小説の金色のカブトムシや、死頭蛾しとうがという大きなガの背中にも、がい骨の顔がうきだしていますが、あれらと同じような、おそろしいもようが
鉄塔の怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
こいつときたら、何かもう、甲虫かぶとむし黄金虫こがねむしでも見つけようものなら、たちまち眼玉をキョロキョロさせましてね、直ぐにそれを追かけまわして、もう夢中になってしまうんですよ。
こがねまる おら、……いつだったか、お薬鑵やかんの中に黄金虫こがねむしを一杯つめ込んで、……お湯をかけて、焚火たきびかして、……「せんじ薬」だよってごまかして、胡蝶に飲ましちゃったイ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
彼は手向かいしようとしたが、その力がなかった。するともう身動きもせず、黄金虫こがねむしのように仰向けにひっくり返って、せた両腕をアントアネットの頑丈がんじょうな手で芝生しばふに押えつけられた。
幼稚園では、遊戯ゆうぎを教えてくれる。音楽にあわせて、簡単な舞踊ぶようのようなものを教えてくれる。たとえば、「黄金虫こがねむしは金持ちだ」というの類である。それは、或る意味では、優美ゆうびであり、可愛らしい。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
黄金虫こがねむし飛ぶ音きけば深山木みやまぎの若葉の真洞春ふかむらし
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
黄金虫こがねむし
未刊童謡 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
と、小さな黄金虫こがねむしが一匹ぶうんと音を立てて、飛んで来て、その光の輪にはいったかと思うとたちまち羽根を焼かれて、下へ落ちた。青臭いにおいが、ひとしきり鼻を打つ。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そして床のすみに小さく黄金虫こがねむしのように固まりながら
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
燦燦きらきらひそむ黄金虫こがねむし
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)