麺棒めんぼう)” の例文
その棒も、そこらの麺棒めんぼうやしん張棒ばりぼうを、有り合うまま、引っ抱えて来たものとは違い、一種の武器としての光を持っている。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
親分と唖の巳代吉の間はいよ/\睨合にらみあいの姿となった。或日巳代吉は手頃てごろぼうを押取って親分に打ってかゝった。親分も麺棒めんぼうをもって渡り合った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
犬がどこか下の階段でけたたましくほえ立てていると、一人の女がそれに麺棒めんぼうを投げつけて、わめいていたような気もした。彼は下までおりきって構内へ出た。
潰れた帽子は麺棒めんぼうした蕎麦そばのように平たくなる。それを片端からむしろでも巻くごとくぐるぐる畳む。「どうですこの通り」と丸めた帽子を懐中へ入れて見せる。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
剛情なお島は、到頭麺棒めんぼうなぐられたり足蹴あしげにされたりするまでに、養父の怒を募らせてしまった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
納所なっしょ二人も尻はしょり、一人は麺棒めんぼう、一人は鉄火箸かなひばしを得物に代えて、威風凜々りんりんというありさま。隅々を見回ってから四人額をあつめひそひそささやき合い、また立ち分かれて見回り歩く。
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
「これだ——心張りは麺棒めんぼうの古いのか何んかだが、思ひの外丈夫らしいな」
またいつもかげかたちふやうな小笠原氏をがさはらしのゐなかつたのは、土地とち名物めいぶつとて、蕎麦切そばきり夕餉ゆふげ振舞ふるまひに、その用意ようい出向でむいたので、今頃いまごろは、して麺棒めんぼううでまくりをしてゐやうもれない。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
真暗まっくらなところに麺棒めんぼうをもってこねた粉をのばしていると、傍に大がまがあって白い湯気が立昇たちのぼっていたり、また粉をふるっている時は——宅の物置のつづきのさしかけで、かどの小さな納屋の窓から
するのみなり時に半四郎は大音だいおんあげ盜人どろばう這入はひりしぞや家内の者共起給おきたまへ/\とよばはるにぞ夫れと云つゝ亭主は勿論もちろん飯焚めしたき下男迄一同に騷ぎたち盜人は何處いづくへ這入しと六尺棒或ひは麺棒めんぼう又ははゝき摺子木すりこぎなど得物を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
と、二人の刑吏が間にはいって長い麺棒めんぼうみたいなかしの棒で、男女ふたりを隔てた。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
タッフィがやってきて、こんどは麺棒めんぼうぬゥすんだ。
まざあ・ぐうす (新字新仮名) / 作者不詳(著)
「な、なに。この麺棒めんぼうめ」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)