鯱子張しやちこば)” の例文
おどろいたかほをして、ちよつきをがつくりと前屈まへかゞみに、ひぢかに鯱子張しやちこばらせて、金時計きんどけいめながら
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そこにはNといふとしとつた洋画家が六朝の文字のやうに鯱子張しやちこばつて控へてゐた。
茶話:12 初出未詳 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
これまで幾度いくたびか師匠の九つ目を聴いて、結構な出来だと思はぬ事は無かつたが、さて自分が語つてみると、戸無瀬となせ本蔵ほんざうも初めから鯱子張しやちこばつて、まるで喧嘩を売りに来たやうにしか見えない。
派手好きな鴈治郎は、刃傷にんじやうの場で思ひきり派手なき方をして舞台を巧くさらへてかうと註文をつけてゐたらしかつた。で、火熨斗ひのしをあてた白襦袢しろしやつのやうに、真青に鯱子張しやちこばつて舞台へ出た。
かくは寒さうな顔を見合はせて、一緒に立つて侯爵にお辞儀をした。そして玄関で待たせたくるまに乗ると、言ひ合せたやうに体を鯱子張しやちこばらせて「勇だ/\。大いにるぞ」と強ひて附景気つけけいきをしてゐた。
「あすこに居る、あの鯱子張しやちこばつた男だ。」