魔符まふ)” の例文
という流言は、ほんの一時にせよ、魔符まふのように、武田陣のあいだに広まり、みるみるうち落莫らくばくたる気落ちの色が全軍をおおった。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
驚いた群集は、こけまろんで、逃げちりながら、各〻の手にもらった物を、魔符まふのように、おぞ毛をふるって捨ててしまった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
魔符まふがそれに封じ込まれてあると分っていても、封を破ってぬすみ見るようなことは武門としてゆるされもせず、官兵衛としても自己にじる。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
口に魔符まふを噛み、髪をさばき、いんをむすんでなにやら呪文を唱えている容子だったが、それと共に烈風は益〻つのって、晦冥かいめいな天地に、人の形や魔の形をした赤、青
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いや、「菊水の旗も、鬼神の魔符まふではあるまい。正成、何ほどのことやある」と、あえて吶喊とっかんをこころみた細川阿波守の弟頼春が、序戦をし損じ、自分もまた重傷を負って仆れてからの膠着だった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)