高野槙こうやまき)” の例文
旧字:高野槇
赤松を主にし、高野槙こうやまき、五葉松、檜、椎、ゆずりは、山茶花等が植え込まれている。楓も目立って多い。私は飛石伝いに歩いて行った。
澪標 (新字新仮名) / 外村繁(著)
四つ目垣の内に、高野槙こうやまきが一本とちゃぼ檜葉ひばが二三本と植えてあって、植木の間から、竹格子を打った肘懸窓ひじかけまどが見えている。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
庭の松と高野槙こうやまきとの間に蜘蛛くもが大きな網を張っている。二本ながら高い樹で丁度二階の鼻の先に突き出ているので、この蜘蛛の巣が甚だ眼障めざわりになる。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「左様でございますよ、御承知の通り檜に椹、それから高野槙こうやまき羅漢柏あすひ𣜌ねずこを加えまして、それを木曾の五木とたたえている者もあるようでございます」
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
長い廊下の一方は硝子障子ガラスしょうじで、庭の刀柏なぎ高野槙こうやまきにつもった雪がうす青く暮れた間から、暗い大川の流れをへだてて、対岸のともしびが黄いろく点々と数えられる。
老年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
肘掛窓ひじかけまどの外の高野槙こうやまきの植えてある所に打水をして、煙草をみながら、上野の山でからすが騒ぎ出して、中島の弁天の森や、はすの花の咲いた池の上に、次第に夕靄ゆうもやが漂って来るのを見ていた。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)