駈来かけきた)” の例文
旧字:駈來
もなく横山町辺よこやまちょうへんの提灯をつけた辻駕籠つじかご一梃いっちょう、飛ぶがように駈来かけきたって門口かどぐちとどまるや否や、中から転出まろびいづ商人風あきうどふうの男
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
三吉は腕を叩きて、「たしかに、請合いました。」「よくせい。」とひらりと召す。梶棒かじぼうを挙げて一町ばかり馳出はせいだせる前面むかいより、駈来かけきたる一頭の犬あり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
予はひやりとして立停たちどまりぬ。やゝありて犬は奥より駈来かけきたり、予が立てる前を閃過せんくわして藪のおもて飛出とびいだせり。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おおいなる顔を、縁側にもたげて座敷をうかがい、飜然ひらりと飛上りて駈来かけきたり、お丹の膝にすり寄れば、もとどり絡巻からまける車夫の手を、お丹右手めてにて支えながら、左手ゆんでを働かして、(じゃむこう)の首環くびわを探り
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)