饗応もてな)” の例文
旧字:饗應
屋敷の主人は弥兵衛のために、驚くばかりの馳走をし、茶菓を出し酒肴をととのえ、着飾った娘のおきたをさえ出し、琴を弾かせて饗応もてなした。
一枚絵の女 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と取合う気色も見えぬに、茶一杯饗応もてなされぬ助役は悄然すごすごとして元し道にとってかえしぬ、正兵衛は後見送りて、皺苦茶しわくちゃの眉根をひそめ、ああ厄払い厄払い。
厄払い (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「皆彼方へ往って、客人を饗応もてな準備したくをするが好い、客人にはそれまでに、ちょっと御目にかけるものがある」
人面瘡物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
たしかに十七八歳なる乙女の生胆なりとて、約束の黄金三枚を与へしのみかは、香煙、美酒、美肴に加ふるに又も天女の如き唐美人の数人を饗応もてなし与へぬ。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そして母屋おもやの邸の台所からビールを貰って来て、青年を待った。青年は笑を含みながら大部分の時間をばあやに素直に饗応もてなされた。酒は強いらしくいくら飲んでも大して変らなかった。
高原の太陽 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
暫くつて出掛けてみると、姥さんは色々の御馳走を出して饗応もてなして呉れた。
どう饗応もてなそうかとあせるように、しきりに首をひねってから
キャラコさん:06 ぬすびと (新字新仮名) / 久生十蘭(著)