雛罌粟ひなげし)” の例文
彼は二人の間の空間をかつての生き生きとした愛情のように美しくするために、花壇の中からマーガレットや雛罌粟ひなげしをとって来た。
花園の思想 (新字新仮名) / 横光利一(著)
矢車菊や雛罌粟ひなげしが我々の腕にはみ出してゐた。空は火であつた。見渡す限りの広大さ、沈黙は眩暈に満ちてゐた。不可能な、もしくは無関心な死。
楚々そそとしてつつましやかに花を付けるあの可憐かれん雛罌粟ひなげしの花のような女性が、夫人の手近にいることを、人々は忘れはしまい。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
なつかしき雛罌粟ひなげしの色せる絹笠をたる灯火の見ゆるを下より仰ぎ見さふらひし時、いかばかり心をどりさふらひけん。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
百合さんは私の姿を見ると雛罌粟ひなげしのやうに紅くなつた。私はその百合さんをひどく可愛らしいと思つた。
恢復期 (新字旧仮名) / 神西清(著)
汝がこゑの 夢をつつむ雛罌粟ひなげしの花
蛇の花嫁 (新字旧仮名) / 大手拓次(著)
風にふらふらうごく雛罌粟ひなげし
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
はなゑやれ、雛罌粟ひなげしを。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
雛罌粟ひなげしの夢を見るのみ。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
雛罌粟ひなげしはひらき
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
彼は部屋の壁々に彼女の母の代りに新しい花を差し添えた。シクラメンと百合の花。ヘリオトロオプと矢車草やぐるまそう。シネラリヤとヒアシンス。薔薇ばらとマーガレットと雛罌粟ひなげしと。
花園の思想 (新字新仮名) / 横光利一(著)
木蔭には野生の雛罌粟ひなげし其他そのたの草花がたけ高くさき乱れて、山鳩のむれが馬蹄の音にも驚かずにりて居る。フツクと云ふ家は何となく東京の王子の扇屋あふぎや聯想れんさうさせる田舎の料理屋レスタウランである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
豪然と咲き誇つてゐる向日葵ひまはりに譬へたならば、それとは全く反対に、鉢の中の尺寸の地の上に、楚々として慎やかに花を付けるあの可憐な雛罌粟ひなげしの花のやうな女性が、夫人の手近にゐることを
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
黄ばんだ麦と雛罌粟ひなげし
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
雛罌粟ひなげしは顫へ
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
下を眺めると雛罌粟ひなげし撫子なでしこや野菊や矢車草の花の中には青い腰掛バンクが二つ置かれて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)