陸中りくちゅう)” の例文
所は陸中りくちゅうの国である。盛岡から西へ六、七里も行くであろうか。雫石しずくいしと呼ぶ村に入る。そこから更に進むと間もなく御明神ごみょうじんの村に達する。
陸中雑記 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
ところが私のきいた陸中りくちゅう原台の淵の話では、長者の娘は水の底に一人で機を織っており、なたはちゃんとその機の台木に、もたせ掛けてあったということで
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
病室の片側には綱を掛けて陸中りくちゅう小坂おさかの木同より送り来し雪沓ゆきぐつ十種ばかりそのほかかんじきみの帽子など掛け並べ
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
そこは陸中りくちゅうある海岸であった。一人のわかい漁師は沙丘すなやまの上に立って、悲しそうな眼をして海のほうを見おろしていた。漁師は同棲したばかりの女房を海嘯のためにさらわれた者であった。
月光の下 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
国の名で申しますと、陸奥むつ陸中りくちゅう陸前りくぜん羽後うご羽前うぜん磐城いわき岩代いわしろの七ヵ国となります。昔の「みちのく」即ち道の奥と呼んだ国のはてであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)