鎧甲よろいかぶと)” の例文
「あの山伏は、おそらく九度山くどやまの一類だろう。兜巾ときん白衣びゃくえ鎧甲よろいかぶとに着かえれば、何のなにがしと、相当な名のある古強者ふるつわものにちがいない」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天正てんしょう二年の冬からとなりの国と戦争をしているので、この肥前ひぜん(長崎県)大村城のるすをまもるものたちは、鎧甲よろいかぶとのつくろいをしたり、武者草鞋わらじや弓矢をこしらえたり
伝四郎兄妹 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
小児こども粉米こごめ団子だんごの固くなつたのが、鎧甲よろいかぶとまとうて、上にまたがつたやうに考へたのである。
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おどしの糸のやや古びた、源平時代の鎧甲よろいかぶと、宝石をちりばめた印度風インドふうの太刀、磨ぎ澄ました偃月刀えんげつとう、南洋産らしい鸚鵡おうむの剥製、どこかの国の国王が、冠っていたらしい黄金の冠、黒檀の机、紫檀の台
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
曹洪は、こう励まして、兄の着ている鎧甲よろいかぶとを解いて身軽にさせ、小脇に抱いて、敵の捨てたらしい駒の背へしがみついた。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あんたは妻のあたしを抱いて寝るときでも、まるでかみしもを着けているようだった、いいえ、鎧甲よろいかぶとを着たようだといったほうがいいかもしれないわ、ちょうど躯のどこかにある瘤か痣を
醜聞 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ひょいと見ると、金色こんじき鎧甲よろいかぶとをつけた恐ろしい武神像と、二匹の小鬼がまつってある。また壇には、供物くもつだの蝋燭ろうそくの燃え残りだのたくさんな色紙などが散らばっていた。彼は、その前に夜具をのべて
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——さては」と、彼はあわてて鎧甲よろいかぶとを身につけた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)