鉄釘かなくぎ)” の例文
旧字:鐵釘
女もしまいにれて来て、鉄釘かなくぎ流の附文つけぶみなどをするようになる。こうなると、いくら偏人でも打っちゃって置くわけにも行かない。
半七捕物帳:36 冬の金魚 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
父親がこの書記に見せた手紙の中には、無量の悲哀かなしみめてあったということです。鉄釘かなくぎ流に書いた文字は一々涙のあとで、情が迫って、言葉のつづきも分らない程。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
アノお隣で、なんくぎを打つんだとまうしますから、蚊帳かや釣手つりてを打つんですから鉄釘かなくぎ御座ございませうとまうしましたら、かねかねとのひで金槌かなづちるからせないとまうしました。
吝嗇家 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
が、何の禁厭まじないか知れぬまで、鉄釘かなくぎ鉄火箸かなひばし錆刀さびがたなや、破鍋われなべの尻まで持込むわ。まだしもよ。お供物だと血迷っての、犬の首、猫の頭、目をき、ひげを動かし、舌をべらべら吐く奴を供えるわ。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
くっきり曲った鉄釘かなくぎが、少しずつ、少しずつ、まっすぐに成りかけて、借金もそろそろ減って来たころ、どうにでもなれ! 笠井さんは、それまでの不断の地味な努力を、泣きべそかいて放擲ほうてき
八十八夜 (新字新仮名) / 太宰治(著)
お半のあたまを鉄槌でがんとくらわしたばかりで無く、長い鉄釘かなくぎを用意して行って、頭へ深く打ち込んだのです。
鉄釘かなくぎおれのようにポツ/\書いたなア、えゝ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
四十以上の大番頭が帳場に坐って、その傍に二人の若い番頭が十露盤そろばんをはじいていた。ほかにもかの和吉ともう一人の中年の男が見えた。四、五人の小僧が店の先で鉄釘かなくぎの荷を解いていた。
半七捕物帳:03 勘平の死 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)