郡司ぐんじ)” の例文
田舎には郡司ぐんじ県吏けんりもいるものを、そんな大それた群盗が、天もおそれず、山東の一角をめておるなど、信じられんことではないか
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふたゝびあんずるに、小野の小町は羽州うしう郡司ぐんじ小野の良実よしざねむすめなり、楊貴妃やうきひ蜀州しよくしう司戸しこ元玉がむすめなり、和漢ともに北国の田舎娘世に美人の名をつたふ。
近江の国から、或郡司ぐんじの息子が宿直とのいのために京に上って来て、そのおばにあたる尼のもとに泊ることになったのは、ちょうど秋の末のことだった。
曠野 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
そのころはまだ郡司ぐんじ大尉が大川から乗出し、北千島のはてまでも漕附こぎつけた短艇ボート探検熱はまだ忘れられていなかったから、川上の機智はそれに学んだのか
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
新聞記者しんぶんきしやとしては、國民こくみん松崎まつざき平福ひらふく郡司ぐんじの三時事じじ左氏さし東京毎日とうきやうまいにち井上氏ゐのうへし毎日電報まいにちでんぱう近藤氏こんどうし、やまとの倉光氏くらみつし日本にほん中村氏なかむらし萬朝まんてう曾我部そがべ山岡やまをか報知はうち山村氏やまむらし城南じやうなん高橋氏たかはしし
ふたゝびあんずるに、小野の小町は羽州うしう郡司ぐんじ小野の良実よしざねむすめなり、楊貴妃やうきひ蜀州しよくしう司戸しこ元玉がむすめなり、和漢ともに北国の田舎娘世に美人の名をつたふ。
国司こくしでも、郡司ぐんじでも、おれのまねは、よも出来まい。——その下の、かみでも、すけでも、じょうでも、さかんでも、みんなおれにお世辞をいってくるではないか
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
尼は当惑そうに、しかしもう見つけられてしまっては為方しかたがないように、その女の不為合せな境涯を話してきかせた。郡司ぐんじの息子はさも同情に堪えないように、最後まで熱心に聞いていた。
曠野 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
むかしの、出羽でわ郡司ぐんじの娘、小町の容色をひく錦子も、真っ白な肌をもっている、しかも、十七の春であれば、薄もも色ににおってくる血の色のうつくしさに、自分でも見とれることもあるのだった。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
また、城主、郡司ぐんじ、その臣下、そして、集まっている無数の民衆がいる。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かみは、すこし微醺びくんを帯びたまま、郡司ぐんじが雪深いこしに下っている息子の自慢話などをしているのをききながら、折敷おしきや菓子などを運んでくる男女の下衆げすたちのなかに、一人の小がらな女に目をとめて
曠野 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)