やッ)” の例文
「飛んでもない、いまは落人だ。——ああ、いものがある。別嬪べっぴん従妹いとこ骨瓶こつがめです。かりに小鼓と名づけるか。この烏胴からすどうやッつけよう、不可いけないかな。」
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さきへ、一口やッつけてと。……ふーッ、さて、こう度胸のすわった処で、一分別遣ッつけよう。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ペエジをやッつ、とッつして、眠気ざましに声を出して読んでいたが、こう夜が更けて、可恐おそろしく陰気にとざされると、低い声さえ、びりびりと氷を削るように唇へきしんで響いた。
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
第一「あんた、居やはりますか。」さて、思うに、「あの、居なはるか。」とおとずれたのだか、それさえ的確さだかではないのだそうであるから、構わず、関東の地声でもってやッつける。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「じゃあ御免を被ってやッつけますぜ。」と素頂天すってんぴんにぞんざいな口を切って、たもとの下をくぐらすと、脱いだ羽織を前へ廻して、臆面おくめんもなく、あなた方のかなえに坐った真中まんなかで、裏返しにしてふわりと拡げた。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)