逸品いっぴん)” の例文
乾雲、坤竜の二刀、まことに天下の逸品いっぴんには相違ない。だが、この刀がそれほど高名なのは、べつに因縁わけがあるのだと人はいいあった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
しかもその九個が整然と同距離に按排あんばいされて、あたかも人造のねりものと見違えらるるに至ってはもとより天下の逸品いっぴんをもって許さざるを得ない。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さすがは豪家のことであって書画や骨董こっとうや刀剣類には、素晴らしいような逸品いっぴんがあったが、惜し気なく取り出して見せてくれた。これも彼には嬉しかった。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「さあ、鞄をここへ載せて……そしていよいよ赤見沢博士謹製きんせい摩訶まか不思議なる逸品いっぴんの拝観と行こうか」
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
逸品いっぴんだ。素晴らしい逸品だ。この間、伊達侯爵だてこうしゃく家の売立に出た夏珪かけいの『李白観瀑りはくかんばく』以上の逸品だ!」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
そしてついに、こんどこそはと思われる逸品いっぴんができあがりつつあった。春吉君は、細心の注意をはらって、竹べらをぬらしては、茶わんのはらの凹凸おうとつをならしていった。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
いやもう、かの役、至極絶妙、極上々吉、歌舞伎道、はじまっての逸品いっぴんとでも申しましょうか。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
それは、桑名くわなの城下で、すすけた古物屋のたなざらしの中から見つけ出した笛だった。値はお話にならないくらい安かったが、手がけてみると逸品いっぴんで、誰か、名人の手になった作にちがいない。
八寒道中 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
永井君の作品では、「榎物語えのきものがたり」が、そういう意味で逸品いっぴんであると私は思う。
武州公秘話:02 跋 (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
永井君の作品では、「榎物語えのきものがたり」が、そういう意味で逸品いっぴんであると私は思う。
「当節珍らしい逸品いっぴんでおじゃるな」
とこにかかっている若冲じゃくちゅうの鶴の図が目につく。これは商売柄しょうばいがらだけに、部屋に這入はいった時、すでに逸品いっぴんと認めた。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「おい、まだここには、こんな素晴らしい逸品いっぴんがあるんだぜ。どうだ、陣中見舞じんちゅうみまいとして、一杯いこう」
暗号音盤事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「名器は名器にしろ、あのうすぎたない茶壺が、柳生家門外不出の逸品いっぴんと伝えられていたのは、さては、そういう宝の山の鍵がおさめられてあったのか。そうとも知らず——」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
らし中には骨董品こっとうひんなどもあって今日でも百円二百円五百円などと云う高価なのがめずらしくない天鼓の飼桶には支那から舶載はくさいしたという逸品いっぴんまっていた骨は紫檀で作られこし琅玕ろうかん翡翠ひすいの板が入れてありそれへ細々こまごまと山水楼閣ろうかくりがしてあったまこと高雅こうがなものであった。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
朝鮮古渡りの逸品いっぴんだけに、焼きのぐあいがしっとりとおちつき、上薬うわぐすりの流れは、水ぬるむ春の小川……せりの根をあらうそのせせらぎが聞こえるようだと申しましょうか、それとも
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「いや、逸品いっぴん!」
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)