蹴飛けとば)” の例文
その上何ぞというとなぐったり蹴飛けとばしたり惨酷ざんこくな写真を入れるので子供の教育上はなはだよろしくないからなるべくやりたくないのですが
中味と形式 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
秋と言つても、まだ生暖かい時で、薄い夜の物を蹴飛けとばし加減に、主人の死骸は半分床から滑り落ちて居ります。
しかし事実はもう殆ど明白である。慶三は夜具を蹴飛けとばし足音荒く二階から駈け下りるが否や、有合ありあう下駄をつッかけて物をも云わず戸外おもてへ飛出そうとした。
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
晩餐ばんさんの菜が気に入らぬと云って、御膳おぜん蹴飛けとばした。夜は十二時過に酔って帰って来ることもあった。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
成長の上、坊主にするぜん申す通り、亡父ぼうふ俗吏ぞくりを勤めるのが不本意であったに違いない。れば中津を蹴飛けとばして外に出ればい。所が決してソンナ気はなかった様子だ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そしてクリストフをも一度舞台に連れ出そうとした。しかし子供は猛然とそれを拒み、祖父の上着にしがみついて、近寄る者を足で蹴飛けとばした。しまいには涙にむせんだ。
さげ詫入る處を猶も又めつた打ちに打ちたゝやが蹴飛けとば蹴返けかへして直に請人石町甚藏店の六右衞門を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「剛情張ると蹴飛けとばすぞ」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
八五郎は屋敷の外へ出ると、道の小石を蹴飛けとばしたり、羽目板を叩いたり、立つた腹のやり場に困る樣子ですが
落る時左の手でしたたか馬の太腹をたたいて、からくも四這よつばいの不体裁をまぬがれた、やれうれしやと思う間もなく鉄道馬車は前進し始める、馬は驚ろいて吾輩の自転車を蹴飛けとば
自転車日記 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
續いて菊次郎——日頃かしこさうに取澄してゐるのが、膳を二三枚蹴飛けとばすと、湧き上がるやうな怪奇な手振りで、ヒヨロリ、ヒヨロリと人の間を泳ぎ廻るのです。