贄卓にへづくゑ)” の例文
法皇は式の衣を脱ぎて、贄卓にへづくゑの前に立ち、十字架を拜せり。金笛の響凄じく、「ポプルス、メウス、クヰツト、フエチイ、チビイ」
贄卓にへづくゑの上の色硝子いろガラスの窓から差し入る夕日が、昔の画家が童貞女の御告おつげの画にかくやうに、幅広く素直に中堂に落ちて、階段に敷いてある、色の褪めた絨緞を彩つてゐる。
駆落 (新字旧仮名) / ライネル・マリア・リルケ(著)
それまでにもセルギウスは聖餐を戴く度に慰安を得て心が清くなる様に思つたが、今院僧になつて自分で神に仕へる事になつて見ると、贄卓にへづくゑに贄を捧げる時、深い感動と興奮とを覚えて来るのである。
寡婦の目の涙のやうに、黒布で包んだ贄卓にへづくゑの蝋燭が赫く。
戸の上高きところを舟に乘りてゆき給ふ耶蘇、贄卓にへづくゑの神の使、美しきミケルはいふもさらなり、蔦かづらの環を戴きたる髑髏どくろにも暇乞しつ。
われはマリアと贄卓にへづくゑの前に手を握りぬ。おほよそ市長ボデスタの家にゆきかふものは、皆歡喜の聲を發しつれど、其聲の最も大いなるはポツジヨなりき。