語弊ごへい)” の例文
いや、この老婆らうばに對すると云つては、語弊ごへいがあるかも知れない。寧、あらゆる惡に對する反感はんかんが、一分毎に強さを増して來たのである。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
あんな話を、相手にしない、——といっては語弊ごへいがあるが、冷静に批判しながら聞くような国民がもっと多くならないと、日本は助からないよ。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
拾ったというと語弊ごへいがあるが、彼が箱根で山駕やまかごにのると先棒さきぼうをかついでいたのが、この勘太で若くて体もいいのに、ひょろついてばかりいる。そしては後棒あとぼう雲助くもすけ
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「病気と申上げると、語弊ごへいがあります。病癖でございます。それから、それにともなう恐怖心……」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そうすると、人間というものはそういう風に二通りを代表している——というと語弊ごへいがあるかも知れませんが——二通りになるでしょう。其処そこです其処です、それをいわないとく解らない。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
相手には非常に重大の問題でありながら、自分には何の関係ないことがありはせぬか。かく思うと無頓着むとんじゃくというは語弊ごへいもあるが、自分から関係せず、関係深い人に譲りて差支えないことが数多あまたある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
いや、この老婆に対すると云っては、語弊ごへいがあるかも知れない。むしろ、あらゆる悪に対する反感が、一分毎に強さを増して来たのである。
羅生門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
お好きといっては語弊ごへいもあるが、諸事、もの珍らなことには、とかく臨まれたがるふうもあった。なにせい、天皇の御子という高貴と、征夷大将軍なる武威とがある。
「偉人伝というと語弊ごへいがあるが、大体その意気込で宜しい」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)