角兵衛獅子かくべえじし)” の例文
旧字:角兵衞獅子
わたくしの敬愛する所の抽斎は、角兵衛獅子かくべえじしることを好んで、奈何いかなる用事をもさしおいて玄関へ見に出たそうである。これが風流である。詩的である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
寝る時、着換きかへて、とつて、むすめ浴衣ゆかたと、あか扱帯しごきをくれたけれども、角兵衛獅子かくべえじし母衣ほろではなし、母様おっかさんのいひつけ通り、帯をめたまゝで横になつた。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
五、六年前までは、遠い越後えちごの山の中から来るという、角兵衛獅子かくべえじしの姿も、麦の芽が一寸くらいになった頃、ちらほら見られたけれど、もうこの頃では一人も来ない。
最後の胡弓弾き (新字新仮名) / 新美南吉(著)
角兵衛獅子かくべえじしの親方を振り出しに、女衒ぜげん真似まねをやったり、遊び人の仲間へ入ったり、今では今戸に一戸を構えて、諸方へ烏金からすがねを廻し、至って裕福に暮している佐吉の女房です。
それでも宅にさえいれば、よくうさん臭いものにえついて見せた。そのうちで最も猛烈に彼の攻撃を受けたのは、本所辺から来る十歳とおばかりになる角兵衛獅子かくべえじしの子であった。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もし、このうえ、わたしどもが貧乏びんぼうしなければならぬようなら、おまえを角兵衛獅子かくべえじしにでもくれなければならぬと、半分はんぶん本気ほんきで、半分はんぶんはおどかしのつもりだろうが、いったものだ。
さか立ち小僧さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
「大つきだ。いたずらもしてみるものさ。このさいころをよく見ろよ。ころころところがってはぴょこんと起きるじゃねえか。ふいっと今それで思いついたんだ。ホシは角兵衛獅子かくべえじしだよ」
外神田の河岸かしッぷちを、風に吹かれてすッ飛んできた、角兵衛獅子かくべえじしの二人の子。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
角兵衛獅子かくべえじしって、わたしのくにでは、ふゆになると、よくむらからむらへわたってきて、おししのめんをかぶったかわいそうなどもが、さかちしたり、でんぐりがえしをしたりしてせるのだ。
さか立ち小僧さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
余よりも年少なる英国紳士についてその一挙一動を学ぶ事は骨格の出来上りたる大人が急に角兵衛獅子かくべえじしの巧妙なる技術を学ばんとあせるが如く、如何に感服し、如何に崇拝し、如何に欣慕きんぼして
『文学論』序 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
角兵衛獅子かくべえじしが門に至れば、抽斎が必ず出て看たことは、既に言った。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
角兵衛獅子かくべえじしに柳原お馬場の朝げいこ、その二つです。
小僧こぞうさん、角兵衛獅子かくべえじしって、なになの?」と、たけちゃんがききました。
さか立ち小僧さん (新字新仮名) / 小川未明(著)