装填そうてん)” の例文
旧字:裝填
二連発の猟銃を取って火薬を装填そうてんして兵隊用の弾丸をこめると右足の長靴を脱いで、銃口を胸へ当て足で引金を探りにかかったのだ。
主砲係りの兵員は、火薬の煙に吹かれた真黒な顔の中から、キリリと白い歯列を見せて、一弾又一弾と、重い砲弾を装填そうてんしていった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
精々十五発程度のものが紙に包んで添えられていたのであったが、あたりを見廻しながらあかがね色をしたはがねの胴体に、手早く装填そうてんしてしまった。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
彼女はそれを調べて、中の一つを取り、なお震えつづけながら装填そうてんし、ふたたび武器を胸にあてがい、そして引き金を引いた。——やはり発射しなかった。
弾薬を装填そうてんして、わずかの窪地の蔭から、銃口を敵へ擬しながらも、距離を考えて、容易には放たなかった。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
★向側のビルの窓から、ツバのない短剣を銃に装填そうてんして射つ ★窓を通して岩塩で作った弾丸をうちこむ。
探偵小説の「謎」 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
分隊長を助け、部下の砲員を指揮して手早く右舷速射砲の装填そうてんを終わりたる武男は、ややおくれて、士官次室ガンルームに入れば、同僚皆すでに集まりて、はし下りさら鳴りぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
すべての瞬間に破滅の装填そうてんされている宇宙、すべての瞬間に戦慄が潜んでいる宇宙、ジーンとしてそれに耳を澄ませている人間の顔を僕は夢にみたような気がする。
鎮魂歌 (新字新仮名) / 原民喜(著)
鎖は馬車の長さだけに伸び、その先端に一人の監視が、装填そうてんした銃を持って徒歩で控えていた。
死刑囚最後の日 (新字新仮名) / ヴィクトル・ユゴー(著)
彼は自分で銃弾を運び、自分で装填そうてんし、自分で狙った。見ると、味方の戦線からは銃声がほとんど絶えてしまった。ただ自分が操っている機関銃のみが反抗の悲鳴を続けているのであった。
勲章を貰う話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
わたしの内部に切なく装填そうてんされ
原爆詩集 (新字新仮名) / 峠三吉(著)
装填そうてんが不備だったんだな、なに、かまいません! まだ雷管があるでしょう。お直しなさい、待っていますから」
かかる程度の微少量のボロンを計量し、それをテイクロトロンに装填そうてんするのであるが、この計量が至極むずかしい
諜報中継局 (新字新仮名) / 海野十三(著)
氷を弾丸の形にけずって、銃器に装填そうてんし、手早く発射する方法がある。鋭い氷片は被害者の体内に入り、弾痕だんこんを残すが解剖しても弾丸は発見されない。体内でとけてしまうからだ。
探偵小説の「謎」 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
装填そうてんし照準を定め牽索ひきなわを張り発射しまた装填するまで、射的場の精確さらに実戦の熱を加えて、火災は起こらんとするに消し、だんは命ぜざるに運び、死亡負傷はたちまち運び去り
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
と、いっても、弾込たまごめや、つつの掃除に、暇がかかるので、鉄砲組もおよそ、三列三交代ぐらいになって、撃っては、うしろへ退き、次の列に、装填そうてんして待っているのが代って前へ進んでは撃つ。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
博士が十五年前に装填そうてんした長期性時限爆弾に関して、問い合わせに殺到した官界財界その他ありとあらゆる職業部面の、概算がいさん三千人の群衆からのがれるためであった。
刑事から受取った火繩銃には、用意の弾丸と火薬を装填そうてんして、印をつけて置いた元の位置に正確に置き、花瓶と花瓶台も、これには最も綿密に注意をしたのであるが、前にあった位置通りに据えた。
火縄銃 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)