袖摺そです)” の例文
袖摺そですり合うも何とやら申す。見受けたところ大店の者らしい。夜路の一人歩きに大金は禁物じゃ。宅を申せ、見送り届けるであろう。住居はどこじゃ?」
同じ文字をあらわした大形の名刺のぷんと薫るのを、く用意をしていたらしい、ひょいとつまんで、はやいこと、お妙の袖摺そですれに出そうとするのを、まずい! と目で留め、教頭は髯で制して
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
袖摺そですり合ったというのではなく、先方は尋常に歩いているが、こっちは天然自然に足が早いものだから、追い抜いてしまって、その途端に見返ると、がんりきの頭へピンと来たものがあります。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
殺す気でかかれ。こっちは覚悟だ、さあ。ときに女房おかみさん、袖摺そですり合うのも他生たしょうの縁ッさ。旅空掛けてこうしたお世話を受けるのもさきの世の何かだろう、何んだか、おなごりがおしいんです。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
袖摺そですり御縁というやつで、つい、関ヶ原の夕方お見かけ申しちまったんですが、今も申し上げる通り、これが甲州第一の物持の旦那様と知ってお見かけ申しちゃいましたわけじゃあござりませぬ
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)