衣笠山きぬがさやま)” の例文
葬儀は、衣笠山きぬがさやまの等持院でいとなまれた。勅使の差遣さけん、五山の僧列、兵仗へいじょう堵列とれつ、すべて、儀式の供華くげや香煙のさかんだったことはいうまでもない。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
男6 さあ、何でも衣笠山きぬがさやまあたりへ行って三日間ほど山籠りをするのだと云ってましたが、……
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
雨は煙のようで、遠くもない八幡はちまんの森や衣笠山きぬがさやまもぼんやりにじんだ墨絵の中に、薄く萌黄もえぎをぼかした稲田には、草取る人の簑笠みのかさが黄色い点を打っている。ゆるい調子の、眠そうな草取り歌が聞こえる。
竜舌蘭 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
仁和寺にんなじの十四大廈たいかと、四十九院の堂塔伽藍どうとうがらん御室おむろから衣笠山きぬがさやまの峰や谷へかけて瑤珞ようらく青丹あおにの建築美をつらね、時の文化の力は市塵しじんを離れてまたひとつの聚楽じゅらくをふやしてゆくのだった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)