衝立つゝた)” の例文
何処からとも無く蜂のやうにぶつ/\ぼやく声が聞え出した。暫くすると、尻に針を持つたらしい一人の学生が衝立つゝたつて博士を呼んだ。
見渡せば前は平野ひらのである。り残された大木が彼処此処かしここゝ衝立つゝたつて居る。
空知川の岸辺 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
米国のある女学校で、生理の教師が安眠は何よりも健康のお薬だと言つて聞かせると、生徒の一人が衝立つゝたつて質問をした事がある。
だしぬけに後で大きな声でわめく者があるので、皆が吃驚びつくりして振りかへると、両手を懐中ふところに大観が欠伸あくびをしい/\衝立つゝたつてゐた。
猫は額を射られて、後ろ足で衝立つゝたち上つて、二三度きりきり舞をしてゐたが、その儘ばたりとたふれて、辞世も何もまないで死んでしまつた。
ロツクフエラアは子供の言つた事を繰返し/\、首をめられた家鴨あひるのやうな顔をして、暫くは其処そこ衝立つゝたつてゐたさうだ。
ある時書肆ほんやが徳富蘆花氏の原稿を貰ひに、粕谷かすやの田舎まで出掛けると、蘆花氏は縁端えんばな衝立つゝたつて、大きな欠伸あくびをしい/\
その次ぎの日も、寡婦ごけさんは談話はなしがはずむと、ひよいと手を延ばして厭といふ程中野氏の耳を引張つた。国士は顔をゆがめながら、いきなり衝立つゝたち上つた。
あるものは後期印象派の若い洋画家のやうに、鹿子木氏の方に尻を向けて衝立つゝたつてゐた。またあるものは中沢岩太氏のやうにおとがひを突き出してこの画家ゑかきに喧嘩腰でゐた。
演壇の上には尾崎行雄氏が衝立つゝたつて、物におびえた魚のやうな表情をしてゐる。議場は蜂の巣をつゝついたやうな騒ぎだ。大臣席には寺内伯の尖つた頭がてか/\光つてゐる。
台所で皿でも洗つてゐたらしい女中は、銅鑼の音を聴いて、あたふた玄関へ飛び出して来ると、其処そこには帰途かへりがけの客と主人とが衝立つゝたつて、今鳴つたばかしの鋼鑼の評判をしてゐる。
皆は木片きぎれのやうに黙つて衝立つゝたつてゐたが、暫くすると、仲間の一人がリンカンに言つた。