薩摩琵琶さつまびわ)” の例文
私は、子供の頃から薩摩琵琶さつまびわが好きだったので、大きくなってから自分で弾奏をやりながら歌ったこともある。
茶番ちやばんをやる水兵すいへいもある、軍樂ぐんがくそうする仲間なかまもある、武村兵曹たけむらへいそう得意とくいに、薩摩琵琶さつまびわ河中島かはなかじま』の一段いちだんかたつた。このをとこに、此樣こんかくげいがあらうとは今日けふまで氣付きづかなかつた。
何故なぜかと云うと田中君は、詩も作る、ヴァイオリンもく、油絵の具も使う、役者も勤める、歌骨牌うたがるたうまい、薩摩琵琶さつまびわも出来ると云う才人だから、どれが本職でどれが道楽だか
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
詩吟しぎん薩摩琵琶さつまびわ、落語、講談、声色こわいろ手品てじな、何でも出来た。その上また、身ぶりとか、顔つきとかで、人を笑わせるのに独特な妙を得ている。従ってクラスの気うけも、教員間の評判も悪くはない。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)