づる)” の例文
頭には毛がなく、頭蓋骨ずがいこつが見えており、その上には血管が見えていた。手にはぶどうづるのようにしなやかで鉄のように重いむちを持っていた。
鮎の若竹蒸し、というのは、今年竹のひと節を割り、その中へ鮎をまるのまま入れ、あけびづるで巻いたのを、外から藁火わらびで蒸し焼きにする、のだそうである。
山彦乙女 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
あけびづるを輪にしてげていた一人の原士、流れへ寄ってザブザブとそれを濡らし、ピューッと手でしごいてひものように柔らかくしたのを、「それッ」と向うへ投げてやった。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてさっそくおりの補強をして——その檻も兀鷹ズール族の搬んで来たのは丈夫なゼダづるの三重檻であったが、この檻から移すことなぞはとても危険ででき得べくもなかったから、この蔓檻のまま
令嬢エミーラの日記 (新字新仮名) / 橘外男(著)
こどもを山にかずける度びに翁の腹にできたはらわたの捻纏ねんてんは、だんだん溜って翁の腹をになの貝の形に張り膨らめた。それに腹の皮を引攣ひきつられ翁はいつも胸から上をえびづるのようにたわめて歩いた。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
秋風や葛屋はなれてひさごづる 英之
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
しかも拝領はいりょうしたその刀は、武田家伝来たけだけでんらいの名刀般若丸はんにゃまる尺七、八寸の丁字ちょうじみだれ、抜くにも手ごろ、斬るにも自在な按配あんばい、かの泣き虫蛾次郎がじろうがじまんする、あけびづるをまいた山刀などとは
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)