蓬壺ほうこ)” の例文
入道は、一室から沁々しみじみと、眼を千種ちぐさの秋にやっていた。園内によもぎを多く植えてあるので、そこの室を蓬壺ほうこんでいた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
検非違使けびいしさえも、法令の禁ずる摺衣すりごろもを着けて、白昼の大道を踊り歩いた。蓬壺ほうこの客もまた一団となって繰り出した。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
そして、われ知らず頬をながれるものをぬぐわずに、蓬壺ほうこの園にすだく昼の虫に心を沈めていると、どたどたっと廊を早足に渡ってくる跫音あしおとがした。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蓬壺ほうこの主人は、やはりもう今は貴族で、庶民のひとりではなかった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)