落武者おちむしゃ)” の例文
はたして、その日の午後になると、この部落へ、いような落武者おちむしゃの一隊がぞろぞろとはいってきた。各戸かっこの防ぎを蹴破けやぶって
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上野の戦争のときに彰義隊の落武者おちむしゃをかくまったというので、寺にも居にくくなって、京都の方へ行ったそうです。
半七捕物帳:25 狐と僧 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この附近に、平家へいけ落武者おちむしゃの墓があったといわれている一叢ひとむらの林があったので、伯父が見に行って見たら、それが全部白檀の林だったのだそうである。
由布院行 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
なまじい際立きわだった御馳走などをしては、どうもいつもと違うた御馳走を今夜に限ってするのは、少し変だなと万事に警戒している落武者おちむしゃの事であるから
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
しかしその年も翌年も失敗したと見えて、私達が二年になった秋に、落武者おちむしゃとして再び一年級へ入学した。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
私は浪費のあげくに三日間ぐらい水を飲んで暮さねばならなかったり下宿や食堂の借金の催促で夜逃げに及ばねばならなかったり落武者おちむしゃの生涯は正史にのこるよしもなく、さん又惨
いずこへ (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
岩と木立の間へ惣太は素早すばやく身をひそませると、流れを上ってこちらへ来るのは、都合十人ほどの武士であって、その服装のいかめしいのを見ても落武者おちむしゃでないことは確かです。
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
が、富士ふじ裾野すその迂回うかいして、相模さがみざかいへくると、無情な北条家ほうじょうけではおなじように、関所せきしょをもうけて、武田たけだ落武者おちむしゃがきたら片ッぱしから追いかえせよ、と厳命してあった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「三四人官立を受けますから、九月には落武者おちむしゃが帰って来るかも知れません」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
勘次郎は落武者おちむしゃの一人として、降りしきる五月雨さみだれのなかを根岸のかたへ急いでゆくと、下谷から根岸方面の人々はいくさの難を逃がれようとして、思い思いに家財を取りまとめて立退いた後であるから
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「穴山の残党なら、湖畔こはんで伊那丸のために討ちもらされた落武者おちむしゃだろう。こんなときには、少しのやつも味方のはしだ。そのなかからおもだった者だけ二、三人とおしてみろ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)