船手組ふなてぐみ)” の例文
「お船手組ふなてぐみのこのわしが、内から手引きすることじゃ、決してそこに抜かりはない。いよいよ殿のお渡りもあと二月ふたつき、九月の初めと決まっている」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「知れたこと、お船手組ふなてぐみの九鬼弥助だ。天下何人なんぴとたるを間わず、御禁制の境を破って阿波への入国をくわだつる者は、引っからめて断罪たること知らぬうつけはない筈じゃ」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「こんな山の中だから、思いだせないのでございましょう。あなたもお船手組ふなてぐみの森様、わっしも密貿易船ぬきやぶねの三次です。お互に水の上で顔を合せりゃ、ああ、あの時のあの野郎かと……」
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
物かげにひそんで、一応辺りを眺め廻すと、船手組ふなてぐみのお長屋や役宅の棟がかぎの手なりに建てならび、阿波守の住む下屋敷の方へも、ここからは何の障壁しょうへきもなく、庭つづきで行かれそうだ。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)