舷側ふなばた)” の例文
料理番コックは猿のようにうまく舷側ふなばたを上って来て、やっていることを見るや否や、「おや、兄弟きょうでえ! これぁ何だい?」と言った。
佐吉は舷側ふなばたから乗りだして、眉を寄せながらそのようすを見ていたが、ドキッとしたような顔で四人のほうへ振りむくと
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
少女は再び身を起して、我に光明を授け給へと唱へかけしが、張り詰めし氣やゆるみけん、小舟の中にはたと伏し、舷側ふなばたなる水ははら/\と火花を飛しつ。
ところがブッおれたと見ると直ぐに、兄イれん舷側ふなばたひきずり出して頭から潮水しおみずのホースを引っかけて、尻ペタを大きなスコップでバチンバチンとブン殴るんだから
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「何て奇麗な水でしょう」妻は舷側ふなばたの水を両手にすくい上げて川をめる。鶴子が真似まねる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それは穏やかな罪のない眠りで、夢ともうつつともなく、舷側ふなばたをたたく水の音の、その柔らかな私語ささやくようなおりおりはコロコロコロと笑うようなのをすぐ耳の下の板一枚を隔てて聞くその心地ここちよさ。
鹿狩り (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
そして、舷側ふなばたにいて測鉛で水深を測っている男がどこでも海図にしるしてあるよりも水が深いと言ったけれども、ジョンは一度も躊躇しなかった。
己がこれまでにどれほどたくさんの立派な船が舷側ふなばたに攻め寄せられたのを見て来たとお前は思う? それから