ししむら)” の例文
八五郎は武者顫むしゃぶるいのようなものを感じました。強敵お狩場の四郎にまた逢える期待が、何かしらこう五体のししむらをうずかせるのです。
と繰返してまた言った。かく可哀相だと思ってやれと、色にうれいを帯びて同情を求めること三たびであるから、判事は思わず胸が騒いでかすかししむらの動くのを覚えた。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まれ揉まれてお角の帯は解けた、上着はすべり落ちる、それを引っぱる、引きちぎる。真白なししむら。お角はその覚悟で、下には軽業の娘の着る刺繍ぬいとり半股引はんももひきを着けていた。
オンコ(いちゐ)よ、が削る、紅柔べにやはき兎のししむらなすオンコよ、しかく光らん。
(新字旧仮名) / 北原白秋(著)
と、一つのししむら豊かの、坊主首級くびが現われた。それを握っている手が見えた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
よみがへり、かつめぐり來て、「ししむら」のなぎさにあふれ
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
刀もてわがししむらを裂きぬ。
偏奇館吟草 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
あざれたるししむらあさり
(新字旧仮名) / 渡久山水鳴(著)
一つ、二つ、処女のししむらに小気味よく鳴ると、それを切っかけのように
両人が姿を見ると、我にもあらず、理学士がししむらは動いたのである。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あはれ、いまあらびゆく接吻くちつけよ、ししむらきよく。……
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
わが靈は、あな、朽つるししむらに。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
弓の折は大納戸の淀んだ風を切ってピシリ、お町のししむらに鳴ります。
ししむらめるみだらなるのほほゑみに。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
みぬらし、わが素膚すはだなるししむらに。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
ししむら戦慄わななきを、いや甘きよく疲労つかれを。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
紅柔べにやはき兎のししむらなす
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)