ほん)” の例文
旧字:
こころよい、なつかしい、身にみる等とほんしていい場合が多い。𪫧怜を「あはれ」とも訓むから、その情調が入っているのである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
帰路は海に沿うて南し、常陸の潮来いたこに遊んだ。服部南郭の昔俗謡をほんした所で、当時猶狭斜の盛を見ることが出来たであらう。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
いずれにしても翻訳ということはずいぶん困難な事業でありますが、それについて想い起こすことは、かの「五しゅほん」ということであります。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
原註。「イル、カワリエル、セルヱンテ」又「チチスベオ」、今侍奉紳士とほんす。此俗とジエノワ府商賈しやうこより出づ。
高踏派の壮麗体を訳すに当りて、多く所謂いはゆる七五調を基としたる詩形を用ゐ、象徴派の幽婉ゆうえん体をほんするに多少の変格をあへてしたるは、そのおのおのの原調に適合せしめむがためなり。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
「いたく」は、強く、熱心に、度々、切実になどともほんし得、口語なら、「そんなに鳴くな」ともいえる。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「ゆゆし」は、つつしみなく、はばからずという意もあって、結局同一に帰するのだから、此歌の場合も、「慎しみもなく」とほんしてもいいが、忌々しいの方がもっと直接的に響くようである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)