紺無地こんむじ)” の例文
そうしてその時の母の服装なりは、いつも私の眼に映る通り、やはり紺無地こんむじ帷子かたびらに幅の狭い黒繻子くろじゅすの帯だったのである。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
◆服装 外套は焦茶色の本駱駝ほんらくだで、裏は鉄色の繻子しゅすえりは上等の川獺かわうそ。服は紺無地こんむじ羅紗らしゃ背広せびろの三つ揃いで、裏は外套同様。仕立屋の名前はサンフランシスコ・モーリー洋服店と入っている。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
と、話ついでに、のびあがって向こうを見ていると、オオその燕作であろう、たけがさ紺無地こんむじ合羽かっぱ片袖かたそでをはねて手拭てぬぐいきふき、得意な足をタッタと飛ばして、みるまにここへけついた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夏になると母は始終しじゅう紺無地こんむじ帷子かたびらを着て、幅の狭い黒繻子くろじゅすの帯をめていた。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
角鷹眼くまたかまなこをした四十前後の男で、紺無地こんむじ旅合羽たびがっぱを着ておりました」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私の心に映るあの紺無地こんむじ帷子かたびらも、幅の狭い黒繻子くろじゅすの帯も、やはり嫁に来た時からすでに箪笥たんすの中にあったものなのだろうか。私は再び母に会って、万事をことごとく口ずからいて見たい。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)