索莫さくばく)” の例文
索莫さくばくたるひとみで、味方の陣をながめわたし、そばにいる長崎時光、城ノ越後守、安東高貞あんどうたかさだ安保あほ道勘どうかん、塩田陸奥守らの副将たちの顔へ
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
実に荒涼索莫さくばく、わたしは遠い昔にさまよい歩いた満洲の冬を思い出して、今年の春の寒さがひとしお身にしみるように感じた。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
不幸にして自分は城山じょうざんの公園に建てられた光栄ある興雲閣に対しては索莫さくばくたる嫌悪けんおの情以外になにものも感ずることはできないが、農工銀行をはじめ、二
松江印象記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ただそれは蔓草つるくさが木の幹にまとい附こうとするような心であって、房帷ぼういの欲ではない。玄機は彼があったから、李の聘に応じたのである。これがなかったから、林亭の夜は索莫さくばくであったのである。
魚玄機 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
私はその日一日はなはだ索莫さくばくたる気持で、いろんな先生の講義を聞いた。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
こうして何と索莫さくばくな……。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)