しょう)” の例文
京子の一びんしょうに、彼女の幸福や不幸が宿っているのだった。京子の機嫌の悪いときは、彼女の生活は暗くなってしまうのだった。
第二の接吻 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
政治まつり朝廟ちょうびょうで議するも、令は相府に左右される。公卿百官はおるも、心は曹操の一びんしょうのみ怖れて、また、宮門の直臣たる襟度きんどを持しておる者もない。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぴんしょう、少し大きなくしゃみをしても、とかく人気を呼びたがる役者にからまったできごとなのです。しかも、その役者が毎晩毎晩気味の悪い幽霊水に襲われるというのです。
右門捕物帖:23 幽霊水 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
谷山は油断なくピストルの筒口を左右に動かしながら、小気味よげにちょうしょうした。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
其女そなたの一ぴんしょうを、みな自分勝手に受け取って、独りで恋をし、独りで悩み、独りで迷い、揚句あげくの果に——又これからも、生涯独りで彷徨さまよい出そうとしている
夏虫行燈 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平田氏は、其場そのばではこの死人の脅迫状を一しょうして了ったことだが、さて、段々時がたつにつれて、何とも云えない不安がそろそろと彼の心に湧き上って来るのをどうすることも出来なかった。
幽霊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
やっと彼女をなだめ得ただけでも村重はほっとした顔であった。かえって彼の方から話をほかにまぎらわせたりして、ようやく室殿の一びんしょうを拾うの有様であった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
突き飛ばされた明智がよろめきながら、こうしょうした。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
現状の柳営では、五人の老中の言葉よりも、出羽守の一びんしょうの方が、御表をも、大奥をも、左右している有様だし、将軍家に至っては、まるで彼のあやつる糸のままに感情があらわされる。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)