立石たていし)” の例文
小松川と中川にかこまれた平井ひらいの洲。川のむこうはもう葛飾かつしかで、ゆるい起伏の上に、四ツ木、立石たていし、小菅などの村々が指呼しこされる。
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
日向ひゅうがの飯野郷というところでは、高さ五ひろほどの岩が野原の真中にあって、それを立石たていし権現と名づけて拝んでおりました。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
黒いこけの生えた石地藏に並んで、『左とうくわうゐん』とつてある字のわづかに讀まるゝ立石たていしの前を、北へ曲つてくと
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
とついこのさきの立石たていし在に、昔からの大庄屋が土台ごと売物に出しました、瓦ばかりも小千両、大黒柱が二抱え。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかも平井橋ひらいばしからかみの、奥戸おくど立石たていしなんどというあたりは、まことに閑寂かんじゃくなもので、水ただゆるやかに流れ、雲ただ静かにたむろしているのみで、黄茅白蘆こうぼうはくろ洲渚しゅうしょ
蘆声 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
多分庭の真ん中の立石たていしそばにある大きい松の木の雪が落ちたのだろう。お松は覚えず一寸ちょっと立ち留まった。
心中 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
流れの中にあった立石たていしが皆倒れて、ほかの石といっしょに紛れてしまったらしいが、そんな物を復旧させたり、よく直させたりすればずいぶんおもしろくなる庭だと思われるが
源氏物語:18 松風 (新字新仮名) / 紫式部(著)
更に立石たていしで岩苔谷が入ってからは、全くの峡流となって、ここにおくの廊下(かみの廊下)の絶壁が始まるのであるが、何処をどのように流れているのか、山の上からでは到底望まれない。
黒部峡谷 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
父方の、四つ木や立石たていし親戚しんせきの人々もきた。私の小さい時からうちの弟子でしだったもの、下職だったものたちも入れかわり立ちかわり来た。それから母方の、田端たばたのおばさんたちも来た。
花を持てる女 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
場所は逗子から葉山を通って秋谷あきや立石たていしへ行くあいだの浦なんです。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
辻の立石たていし
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)