稼人かせぎて)” の例文
「耕平! にしあ早く立派な稼人かせぎてになんなくちゃいけねえぞ。俺等はもう駄目だからなあ。早く立派な馬でも飼うようになって……」
(新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
壮佼わかものは打ちしおるるまでに哀れを催し、「そうして爺さん稼人かせぎてはおめえばかりか、孫子はねえのかい」
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お祭をりましたが、一人息子に死なれた年老としとつた両親ふたおやは、稼人かせぎてが無くなつたので、地主から、田地を取り上げられる、税を納めねいので、役場からは有りもせぬ家財を売り払はれる
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
土蔵破むすめやぶりで江戸中を騒がし長い草鞋を穿いていたまんじの富五郎という荒事あらごと稼人かせぎて、相州鎌倉はおうぎやつざい刀鍛冶かたなかじ不動坊祐貞ふどうぼうすけさだかたへ押し入って召捕られ、伝馬町へ差立てということになったのが
菊枝の母が、若い年で死んだ時などは、村中に「あのじんつあまに追い廻されちゃ……よっぽどの稼人かせぎてだって死んでしまうべさ!」
駈落 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
平三爺は、事実、村でも屈指の稼人かせぎてであった。また、非常なお人よしでもあった。そして爺は、よく他人からだまされた。取引をすると、きっと、損をした。
山茶花 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
稼人かせぎてを戦争へ引っ張られた農家の人達は、それまで持っていた土地を完全に耕しきることが出来なかったので、彼等は自分の持ち地にかえって重荷を感じた。
熊の出る開墾地 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
それで爺は、今では、若い時分、自分が屈指くっし稼人かせぎてだった自慢はもう決してしなくなったのである。
山茶花 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)