秀麗しゅうれい)” の例文
長篠ながしのまでは出馬したが、富士の神容しんようには接していなかったし、参州吉良さんしゅうきらまで鷹狩たかがりに出向いたこともあるが、ついぞ富嶽ふがく秀麗しゅうれいは仰いでいない。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「しかし、えらい変りようじゃなあ。あれほど眉目びもく秀麗しゅうれいだった伴大次郎が、今はまるで鬼の面と言ってもよい。」
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
彼のすがすがしい秀麗しゅうれいな顔が、その瞬間しゅんかんわたしには、虫酸むしずが走るほどいやだったし、おまけに彼が、人を馬鹿ばかにしたようなふざけたつきで、じっとわたしを見ているので
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
あの秀麗しゅうれいなる神州美しんしゅうび象徴しょうちょう富士ふじ裾野すそのに生まれながら、どうしておまえはそんなきたない下司根性げすこんじょうをもっているんだろう。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、秀麗しゅうれい眉目びもくや、明晰めいせきな言語や、お小姓組に育って、行儀の上品なすがたが、その敵対感の中に、往来しだした。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀麗しゅうれいな富士の山肌やまはだに、一まつすみがなすられてきた、——と見るまに、黒雲のおびはむくむくとはてなくひろがり、やがて風さえ生じて、みわたっていた空いちめんにさわがしい色をていしてきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)