磔柱はりつけばしら)” の例文
おきん母子、刑場の中へ歩み入る。舞台半回り、刑場の内部が見える。磔柱はりつけばしらが矢来に立てかけられている。五人の囚人、甚兵衛を
義民甚兵衛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
お前は主人殺しの罪を引受けて、磔柱はりつけばしらを背負うつもりだろう。が、そいつはつまらない料簡だ。お前のした事はよくない事だ。
磔柱はりつけばしらは周囲の竹矢来たけやらいの上に、一際ひときわ高く十字を描いていた。彼は天を仰ぎながら、何度も高々と祈祷を唱えて、恐れげもなく非人ひにんやりを受けた。
じゅりあの・吉助 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
磔柱はりつけばしらの罪人が引廻しのさまをさせて頂き、路傍みちばたながら隠場所かくればしょの、この山崩れの窪溜くぼたまりへ参りまして、お難有ありがた責折檻せめせっかん苛責かしゃくを頂いた儀でござります。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その中央の浪打際に近く十本の磔柱はりつけばしらて、異人五人、和人五人を架けつらねたり。異人は皆黒服、和人は皆白無垢しろむくなり。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
同時にその灯りの中から、ありありと浮び上がって見えたのは、正しく磔柱はりつけばしらを背に負った珠数屋の大尽のお仕置姿でした。しかも、最期は今近づいているのです。
九月十八日には鳶田で塩詰しほづめにした屍首を磔柱はりつけばしら、獄門台にけた。江戸で願人坊主ぐわんにんばうずになつて死んだ西村だけは、浅草遍照院にはうむつた死骸が腐つてゐたので、墓をこぼたれた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
三、四人が磔柱はりつけばしらを蹴倒した。憤怒ふんど、地だんだ、いうまでもない。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
磔柱はりつけばしらがなんのおどしになるものか。
お前は主人殺しの罪を引受けて、磔柱はりつけばしらを背負ふつもりだらう。が、そいつはつまらない量見だ。お前のした事はよくない事だ。
向うづけに屋根裏高き磔柱はりつけばしらいましめられて、の下ひらきてひとの前に、槍をもて貫かるるを。これに甘んずる者ありとせむか、その婦人おんないかなるべき。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
の十九人は、自殺した平八郎、渡辺、瀬田、近藤、深尾、宮脇、病死した西村、人に殺された格之助、小泉を除き、かの江戸へ廻された大井迄こと/″\く牢死したので、磔柱はりつけばしらには塩詰しほづめの死骸を懸けた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「然らば、その間、磔柱はりつけばしらくくりおくぞ」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「明日は札の辻でエロニモ師やガルベスフランセスコ師や、ヨハネ原主水様や、シモン遠藤様と一緒に磔柱はりつけばしらにかけられて、火焙ひあぶりにされるそうですよ」
十字架観音 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
中にも目に着いたのは、一面の壁の隅に、朦朧もうろうと灰色の磔柱はりつけばしらあらわれて、アノ胸を突反つきそらして、胴を橋に、両手を開いて釣下つりさがったのは、よくある基督キリストていだ。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
折角表向だけでも轉んで(改宗)平穩な生活をしてゐる切支丹宗徒達、それをほじくり出して、磔柱はりつけばしらに載つけるのは、錢形平次の忍ぶところではなかつたのです。
我が手で、鉄砲でうった女の死骸を、雪をいて膚におぶった、そ、その心持というものは、紅蓮ぐれん大紅蓮の土壇どたんとも、八寒地獄の磔柱はりつけばしらとも、たとえように口も利けぬ。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「こんなむごたらしい事をする野郎は、磔柱はりつけばしらを五、六本背負わせなきゃ、腹の虫が納まらねえ。畜生ッ」
何となく荒野あれのの中の磔柱はりつけばしらででもあるやうに思つた。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
せっかく表向きだけでも転んで(改宗)平穏な生活をしている切支丹宗徒たち、それをほじくり出して、磔柱はりつけばしらに載っけるのは、銭形平次の忍ぶところではなかったのです。
六尺棒で押しへだてられて、竹矢來の外につまみ出されると、改めて囚人めしうど小三郎を馬からおろし、役人がもう一度罪状を讀み聽かせた上、目隱しをして磔柱はりつけばしらに掛けるのです。
今下の船にゐる兄哥に磔柱はりつけばしらを背負はせて、その餓鬼がきおどかしたり、鈴ヶ森から梟首さらしくびを持つて來て、窓の外へ掛けたのは、皆んな俺達の深い怨みを思ひ知らせるためだつたよ——。
今下の舟にいる兄哥に、磔柱はりつけばしら背負しょわせて、その餓鬼がきを脅かしたり、鈴ヶ森から梟首さらしくびを持って来て、窓の外へ掛けたのは、みんな俺達の深い怨みを思い知らせるためだったよ——。
人形町から八丁堀まで驅け通し、お屋敷の玄關へ着くと氣がゆるんでブツ倒れてしまひましたが、まだ門のあたりに磔柱はりつけばしらを背負つた血だらけな奴が居やしませんか、そつとのぞいて見て下さい
「今に磔柱はりつけばしらを背負はされる野郎だ、好きなやうに暴れさせるが宜い」
「今に磔柱はりつけばしら背負しょわされる野郎だ、好きなように暴れさせるがいい」
磔柱はりつけばしら脊負しよつた、血だらけな男で——」
磔柱はりつけばしら背負しょった、血だらけな男で——」