瞰上みあ)” の例文
父子おやこはここに腰をおろして、見るとも無しに瞰上みあげると、青い大空をさえぎる飛騨の山々も、昨日今日は落葉に痩せて尖って、さなが巨大おおいなる動物が肋骨あばらぼねあらわしたようにも見えた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あるいは怪獣の眼かと市郎はきっ瞰上みあげる途端に、頭の上から小さな石が一つ飛んで来たが、幸いに身にはあたらなかった。市郎はにわかに蝋燭を吹き消した。敵のまとにならぬ用心である。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
上と下とて遥かに呼び合っていたが、何を云うにも屏風びょうぶのような峭立きったて懸崖けんがい幾丈いくじょう、下では徒爾いたずら瞰上みあげるばかりで、攀登よじのぼるべき足代あししろも無いには困った。其中そのうちに、上では気がいたらしい。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)