百万遍ひゃくまんべん)” の例文
旧字:百萬遍
おふくろは近所に百万遍ひゃくまんべんがあって、あかりがくとすぐに出て行ったから、四つ過ぎでなければ帰るまいとのことであった。
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
伯父夫妻は明智の手を取らんばかりにして、上座に据え、お礼の百万遍ひゃくまんべんを並べる。それは大変でした。無理もありません。
黒手組 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
何処どこか近くの家で百万遍ひゃくまんべんの念仏を称え始める声が、ふと物哀れに耳についた。蘿月はたった一人で所在しょざいがない。退屈でもある。薄淋うすさびしい心持もする。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
むしろ行住座臥ぎょうじゅうざがが念仏の中に在るともいうべきで、百万遍ひゃくまんべんはおろか、無辺際むへんざいの念仏であります。しかしそれは数のことではなく、ただの繰返しではありません。
益子の絵土瓶 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
木村ガ間借リシテイルノモ百万遍ひゃくまんべんノ近所デ田中門前町デアルカラ、コノ方ハ関田町ニ一層近イ。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
やがて東のかた百万遍ひゃくまんべん革堂こうとう(行願寺)のあたりにも火の手が上ります。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
百万遍ひゃくまんべん
顎十郎捕物帳:13 遠島船 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
さればやがて数年ののちには法華ほっけ団扇太鼓うちわだいこ百万遍ひゃくまんべんの声全くみ路地裏の水道共用栓きょうようせん周囲まわりからは人権問題と労働問題のかしましい演説が聞かれるに違いない。
京都に百万遍ひゃくまんべんという名刹めいさつがあるが、念仏百万遍から来た名である。ともかく度数多く称える念仏のことである。実際そういう多念仏に大なる功徳くどくを感じた者は多勢いた。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
やがて東のかた百万遍ひゃくまんべん革堂こうとう(行願寺)のあたりにも火の手が上ります。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
ほとんどすべての大本山がここに集ります。浄土宗の知恩院ちおんいん百万遍ひゃくまんべん真言しんごん宗の東寺とうじ智積院ちしゃくいん、真宗の両本願寺ほんがんじ、禅宗の南禅寺なんぜんじ妙心寺みょうしんじ大徳寺だいとくじ、時宗の歓喜光寺かんきこうじ、天台宗の妙法院みょうほういん延暦寺えんりゃくじ
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)