白拍子しらびやうし)” の例文
言ひ伝へによると、白拍子しらびやうししづかが母の磯禅師いそのぜんじはこゝに住むでゐたのださうで、禅師の血統ちすぢはその後も伝はつてゐるが、うまれる娘は皆醜婦揃すべたぞろひである。
其方も見つらん、さんぬる春の花見の宴に、一門の面目とたゝへられて、舞妓まひこ白拍子しらびやうしにも比すべからんおの優技わざをば、さも誇り顏に見えしは、親の身の中々にはづかしかりし。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
桜の釣板つりいた張子はりこの鐘、それからアセチレン瓦斯ガスの神経質な光。お前は金紙きんがみ烏帽子ゑぼしをかぶつて、緋鹿子ひがのこの振袖をひきずりながら、恐るべく皮肉な白拍子しらびやうし花子の役を勤めてゐる。
動物園 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
饗宴の盛大善美を盡せることは言ふもおろかなり、庭前には錦の幔幕を張りて舞臺を設け、管絃鼓箏の響は興を助けて短き春の夜のくるを知らず、かねて召し置かれたる白拍子しらびやうしの舞もはや終りし頃ほひ
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)