留桶とめおけ)” の例文
そう聞かされて見れば、子供心にもなるほどとうなずかれる。流し場の隅に積み重ねてある留桶とめおけのなかで三升みますもんなどが光っていたからである。
敬太郎けいたろう留桶とめおけの前へ腰をおろして、三助さんすけ垢擦あかすりを掛けさせている時分になって、森本はやっとけむの出るような赤い身体からだを全く湯の中から露出した。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お鹿の内には、まだ開業当時というので手水鉢も柄杓ひしゃくも無かった。湯殿の留桶とめおけに水をんで、の子の上に出してある。恐らく待合の手水鉢に柄杓の無いのは、かわやに戸の無いより始末が悪い。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そうして湯屋の留桶とめおけを少し深くしたような小判形こばんなりの桶の底に、硝子ガラスを張ったものを水に伏せて、その中に顔を突込つっこむように押し込みながら、海の底をのぞき出した。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)