申出もうしいで)” の例文
よしその以前に、庄太郎が嫌疑者としてとらわれる様なことがあっても、二郎の申出もうしいでさえあれば、訳なく疑いを晴すことが出来る。
灰神楽 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
一、一味のおのおの存寄ぞんじより申出もうしいでられ候とも、自己の意趣をふくみさまたげ候儀これあるまじく候。誰にても理の当然に申合すべく候。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
掛引かけひきみょうを得たるものなれども、政府にてはかかるたくらみと知るや知らずや、財政窮迫きゅうはく折柄おりから、この申出もうしいでに逢うてあたかわたりにふねおもいをなし、ただちにこれを承諾しょうだくしたるに
落ち着けて聴いて下さいませ! 妾、あの、大変お気の毒ではございますけれども、よく/\考えて見ましたところ、貴君あなたのお申出もうしいでに応ずることが出来ないのでございます。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
丹波丹六はA教授に対して、厳重に答案の再審査を求めましたが、もとよりそんな申出もうしいでは容れられるはずもなく、野球の審判と同様で、教授の採点は神聖冒すべからざるものになっているのでした。
別段悪いことでもないし、若しそれを拒絶したら学資が途絶とだえるので、僕は何の考えもなくこの申出もうしいでを承諾した。そうして、僕の呪われた研究が始まったのだ。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
少し走ると青年が妙なことを云い出したが、どうでもなれと捨鉢の愛之助は無論この申出もうしいでを承諾した。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
私としてはお宅の損害を恢復かいふくしさえすれば、それで役目が済むのですから、下手にやって虻蜂あぶはちとらずに終るよりはと思って、賊の申出もうしいでを承知して帰った様な次第です。
黒手組 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
云うまでもなく、私は静子の申出もうしいでれて、出来る丈けの助力をすることを承諾した。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
木島刑事は、治良右衛門の真面目な申出もうしいでを鼻であしらった。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)