甲寅きのえとら)” の例文
「へ、へ、へ、この迷子札に書いてある、甲寅きのえとら四月生れの乙松といふ伜を引渡して頂きたいんで、たゞそれ丈けの事で御座いますよ、御用人樣」
そは甲寅きのえとらの年も早や秋立ちめし八月末の日なりけり。目出度き相談まとまりて金子翁を八重が仮の親元に市川左団次いちかわさだんじ夫妻を仲人なこうどにたのみ山谷さんや八百屋やおやにてかたばかりの盃事さかずきごといたしけり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
と記してかたわらに、寛政六年甲寅きのえとら十二月 日とある石の記念碑である。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「へ、へ、へ、この迷子札に書いてある、甲寅きのえとら四月生れの乙松という倅を引渡して頂きたいんで、ただそれだけの事でございますよ、御用人様」
目出度き甲寅きのえとらの年は暮れて新しき年もいつか鶯の初音はつね待つ頃とはなりけり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
甲寅きのえとら。四月生、本郷大根畑、左官伊之助伜 乙松
甲寅きのえとら。四月生、本郷大根畑