ひさご)” の例文
たつた一つ取り残しておいた小さなひさごが、引きねぢられたままの蔓と一緒に棚にしがみついてゐて、折柄の風にその不相応に大きな尻を振つてゐるのだつた。
独楽園 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
ついこの間幸田こうだ先生から朝鮮のヒョットコだといって贈られたのが、やはりこのひさご製の素朴なものであった。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
海河の神たちに悉く幣帛へいはくを奉り、わたしの御魂みたま御船みふねの上にお祭り申し上げ、木の灰をひさごに入れ、またはしと皿とを澤山に作つて、悉く大海にらしうかべておわたりなさるがよい
海とかわとの神々にことごとくお供えをたてまつり、それから私たち三人の神の御魂みたまを船のうえにまつったうえ、まきのはいひさごに入れ、またはしぼんとをたくさんこしらえてそれらのものを
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
高さ四、五じょうも、周囲二町もあろうと見えるひさごなりな小島の北岸へ舟をつけた。瓠の頭は東にむいている。そのでっぱなに巨大な松が七、八本、あるいは立ち、あるいは這うている。
河口湖 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
武蔵人と吉備中国きびのなかつくにの人が、河伯かわのかみまた大虬みづちひさごを沈めよと註文せしに沈め得ず、由ってその偽神なるを知り、また斬り殺した二条の話あるを見ると、竜類は瓢を沈め能わぬ故、忌むとしたのだ。
老婦人が去った後、ひさごかきでかこってふたをかぶせて置くと、虫は俄かに変じて犬となった。犬の毛皮には五色ごしきあやがあるので、これを宮中に養うこととし、瓠と盤とにちなんで盤瓠ばんこと名づけていた。
人がひさごやうつぼ舟に乗って、なみただようて浜に寄ったという東方の昔語りは、しばしば桃太郎や瓜子姫うりこひめのごとき、川上から流れ下るという形に変り、深山の洞や滝壺たきつぼには
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
あまかみくにかみ、また山の神海河の神たちまでに悉に幣帛ぬさ奉り、我が御魂を御船の上にませて、眞木まきの灰をひさごに納れ、また箸と葉盤ひらで一〇とをさはに作りて、皆皆大海に散らし浮けて、わたりますべし