瓜二うりふた)” の例文
顔形、それは老若の違いこそはあるが、ほとほと前の婦人と瓜二うりふたつで……ちと軽卒な判断だが、だからこの二人は多分母子おやこだろう。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
すると、山に登ったときの自分に瓜二うりふたつの男が目に入った。自分同様、いかにもものぐさらしいし、じっさい、ぼろをまとっているところはおなじだった。
顔さえも個別的の特色を備えて真実の意味にて瓜二うりふたつというものはないのに、まして、刻々に移動する思想は、個人の自発的なものほど個性の色彩が著しく
激動の中を行く (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
玉枝とよばれたこの女は、その美貌や肉づきでは、ほとんどあの花世と変りがないほど瓜二うりふたつであるが、ただ口をきくと、その語音ごいんはまるで花世とは違っている。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「叔母さんまた奮発して、宵子さんと瓜二うりふたつのような子をこしらえてちょうだい。可愛かわいがって上げるから」
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すこ高過たかすぎるくらゐに鼻筋はなすぢがツンとして、彫刻てうこくか、ねりものか、まゆ口許くちもと、はつきりした輪郭りんくわくひ、第一だいいち櫻色さくらいろの、あの、色艶いろつやが、——それが——いまの、あの電車でんしや婦人ふじん瓜二うりふたつとつてもい。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これはあの御美しい北のかたに、瓜二うりふたつとでも申しましょうか。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
六兵衞と重三は年こそ違へ瓜二うりふたつだらう。
されば、舅殿と瓜二うりふたつの老いぼれが、民家のまどより、信長が行列を
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)