物騒ものさわ)” の例文
旧字:物騷
くこといま幾干いくばくならず、予に先むじて駈込かけこみたる犬は奥深く進みて見えずなりしが、哬呀あなや何事なにごとおこりしぞ、乳虎にうこ一声いつせい高く吠えて藪中さうちうにはか物騒ものさわがし
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ところがのぼってみておどろいたことには、みやこの中はざわざわ物騒ものさわがしくって、いま戦争せんそうがはじまるのだといって、人民じんみんたちはみんなうろたえてみぎひだりまわっていました。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
時はこれやがて明治維新の来らんとして、世の中は次第に物騒ものさわがしくなった時である。
青年の天下 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
「いや、おぬしこそどうしていた、この物騒ものさわがしい世の中に悠々として湯治とうじとは」
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
くてしばらくのあいだといふものは、くつわを鳴らす音、ひづめの音、ものを呼ぶ声、叫ぶ声、雑々ざつざつとして物騒ものさわがしく、此の破家あばらやの庭の如き、ただ其処そこばかりをくぎつて四五本の樹立こだちあり
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
与八は何の気なく手綱たづなを取って行くと、その火のあたりで物騒ものさわがしい人声です。
街道で物騒ものさわがしい声。
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)